私(筆者)は、東京やその近郊の街中を歩きながら、チャイコフスキーの「くるみ割り人形 花のワルツ」「ピアノソナタ」「交響曲第6番の第2楽章(4分の5拍子のテーマ)」を頭の中で何度も繰り返す。美しい旋律美のテーマと、それにからまる装飾・経過句、和声。楽器法も、秀逸。ロシアのメランコリーへと誘われる。それは、1893年のチャイコフスキーの死によって、またロシア革命によって断ち切られた世界かも知れないが、われわれの心の中では永遠だ。
チャイコフスキーとマーラー
チャイコフスキーの偉いところは、前人未到の音楽領域を辺境ロシアで創始達成したこと。先達のグリンカが貴族の血筋で大変に裕福、イタリアで音楽を学び、イタリアで作曲家として活躍したのに対し、チャイコフスキーの生まれた家庭は経済的に余裕がなかった。交響曲第4・5番で国際的知名度を得るまでは、ロシアから離れることはなかった。