小笠原勇美著 「装飾音」(信山社)

(以下、昨日FACEBOOKに投稿した記事ですが、この本が現在入手困難な本になっていることを知り、このBLOGにも投稿します。このような本が広く読まれるようにならないうちは、「芸術文化の○○」といった振興プロジェクトを推進したとしても、本物となるのはほど遠いでしょう) 

図書館で楽理の本を借りようとしていて見つけた本。小笠原勇美先生の書かれた「装飾音」(信山社)。小笠原先生には高校生時代、音楽の授業、吹奏楽部のご指導をいただきました。そのご人脈で、吹奏楽(その当時はトロンボーン・パート)の練習時間に、1日だけの機会ですが、渡邉暁雄先生、金子先生(当時、東京芸大指揮科教授)のご指導を受けることもできました。隣りの合唱部も小笠原先生が指導にあたられ、皆川達夫先生がたびたび、指導に来られていました。

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佐村河内守 新垣隆 交響曲第1番「HIROSHIMA」第1楽章

(FACEBOOKに投稿した文章に加筆)

佐村河内守 新垣隆 交響曲第1番「HIROSHIMA」第1楽章は、YouTubeで聞くことができます。佐村河内さんは名プロデューサーとして再起してほしいですね。新垣さんもその才能に関しては高く評価しているようです。https://www.youtube.com/watch?v=E6PMI331Gmw

管弦楽法は熟達し、重厚な響きをかもしだします。教会旋法に加え、冒頭には、シェーンベルクの「浄められた夜」を思い起こさせる箇所があります。その他連想させる作曲家は、マーラーショスタコーヴィチというよりもトゥビンですね。約20分かかる第1楽章ですが、後半はやや創意に欠け、交響曲全体を70分にするための時間稼ぎのような印象も若干します。第3楽章もYouTubeで聴いたことがありますが、第3楽章よりは、第1楽章のほうが洗練され凝集した音楽になっています。

新垣氏のカバーした分野という点では、彼の存在は(オペラは未発表ながら)コルンゴルド的です。ゲーム 「鬼武者」のサントラである交響組曲ライジング・サン」もYouTubeで聴いてみましたが、こちらは洋楽器と和楽器を巧みに融合したサウンドを創造していることに感心しました。琵琶・尺八が延々と演奏しオーケストラが蚊帳の外の武満徹「ノヴェンバー・ステップス」より、「ライジング・サン」を聴いているほうが面白い音楽体験でした。

バルトークの「中国の不思議な役人」を楽譜を見ながら聴く

YouTubeで、ピエール・ブーレーズ指揮の「中国の不思議な役人」を聴くことができる。画像として楽譜(完全なスコアが現れるのは一部で、多くは4連譜表)が音楽の進行に合わせて現れる。本日は通信速度が遅く、再生が途切れ途切れだったので、バルトークの作曲技術を確認する時間をじゅうぶんに確保しながら聴くことができた。
私は、自分で作曲する経験も長くなってきたので、自分が曲を作る際に発見し感じたことと、バルトークがこの曲を作曲した時に注意したであろう事柄について相似していると思いめぐらしながら。このことは真実である。もし疑問を持たれる方がいたら、ご自分で作曲(少なくとも4声以上の構成で、調性・無調を問わず現代的感覚の曲)を続けてから、バルトークのスコアを眺めるとよい。
高音や低音の強い衝撃の音は短く、中音域の声部は1オクターブ離した2音の平行移動で、半音階や無調の進行は短いパッセージでピアノの分散和音のように。長くすると、不協和音のもつ良い)部分(現代性)よりも悪い部分(濁り・不快)が強調されてしまうので、分散和音のように速い進行とし、一音・一音はすぐに消え去るようにする。ところどころにシンコペーションを挿入し変化・意外性をもたせる(トロンボーンなど低音金管シンコペーション進行の役割をもたせると効果的)  などなど。
この半音階あるいは無調の分散和音的な急速なパッセージは、この曲に数多く見出される。きっとバルトークが楽譜に記入し演奏される前は、彼の頭の中には別のイメージがあったに違いない(西洋伝統和声からの離脱。だが美しく重厚な曲を)。だが、生み出された曲は、24の音の公平な使用とはいいながらも、アラブ音楽のように微分音まで踏み込んではいないので(そうするとピアノでは作曲できなくなってしまう)、平均律の束縛から抜け出てはいない。この状態・構成が、その後の現代音楽のスタンダードとなり、この曲の完成(1925年)後も90年以上、「現代音楽」として続くことを、バルトークは想像していただろうか?
(追記)「春の祭典」(1913年初演)に似た箇所があり、バルトークがこの曲から影響を受けた可能性が高いと思う。また伊福部昭ゴジラは、「中国の不思議な役人」から大きな影響を直接的・間接的に受けているように思える。

サロメア・クルシェルニスキ(クルシェルニツカ)

プッチーニの生涯と作品に関する本を読んでいます。その中で代表作「蝶々夫人」の初演失敗(1904年 ミラノ・スカラ座。第二幕が長すぎたことや、アンチによる妨害が原因とされる)の後、改訂版による再演の大成功(北イタリアのブレーシャ)でタイトルロールを歌い大貢献したポーランドガリチア(現在のウクライナ西部)出身のソプラノ、サロメア・クルシェルニツカに注目しました。この文章を読むと、彼女は自分の名をクルシェルニスキと呼ばせていたと、書かれています。
http://greatsingersofthepast.wordpress.com/…/salomea-krusz…/

BARTOK ( Pierre Citron著)Seuil 1963年初版 1994再版

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バルトークについて研究してみようと思い、フランス語で書かれた本を見つけて購入しました。自分が関心のある・得意な分野であれば、フランス語の文章は何とか読解できます。
譜例、図版、写真が豊富で、センスのある本づくりだと思いました。
バルトークがエジプト旅行に行った際の貴重な写真も。この写真にはヒンデミットも写っています。1932年にカイロで開催されたアラブ音楽に関するエクスカーションの一コマ。
バルトークは音楽を通して、全世界の人々が相互理解するという信念を持ち、英独仏語のみならず、スロバキア語、トルコ語アラビア語などにも通じていたそうです。「ミクロコスモス」は誰でもピアノが弾けるようになるように意図して作曲された練習曲集とのこと。


ナデズダ・ペトローヴィチ(Nadežda Petrović)

ナデジュダと表記すべきかも知れない。19世紀末・20世紀初頭のセルビアの女流画家。先日、ベオグラードを訪問し、国立博物館を訪れた際、彼女の多くの作品が展示されているのを見た。革新的作風ではなく、折衷的と言えるかも知れないが、とにかく多作であり、多作であることも、セルビアを代表する画家と形容されるための条件のひとつかな?と思った。

Max Brodのピアノ五重奏曲 Élégie Dramatique Op33

かなり久しぶりに、CDで、この曲を聴いた。改めて聴いてみると・・・・
チェコ・スプラフォン #11 2188-2 931 演奏:フランチシェック・クーダ(ピアノ)、シュターミッツ弦楽四重奏団
20世紀以降に作曲されたピアノ五重奏曲で、演奏頻度が高い、あるいはそこそこ演奏される曲は、
ショスタコーヴィチコルンゴルト、フランツ・シュミットの作品くらいしか思いつかないが、
このマックス・ブロートのピアノ五重奏曲 Élégie Dramatique Op33 の完成度は高い。20世紀的感性と古典的書式が美しく融合したとでも表現すべきか? この作品が日本でも室内楽コンサートのレパートリーに加えられることを待ち望む。
 
なおこのCDのカバーデザインは、Petr Melan (1947-2009)によるもので、幻想的で魔力を持つ作風。bernardsstarのblogロゴのデザイン構成の中にその一部をコラージュしているので、謝意を込めてその件を、http://www.geocities.jp/bernardsstar/ に記載しておくつもり(本日中)。